麻生稔彦教授(前センター長)が中心となって2017年11月に設立された「工学部付属社会基盤マネジメント教育研究センター」のセンター長をこのたび拝命することとなりました.
私たちの生活を支える社会基盤施設(インフラ)の老朽化は,我が国が抱える社会的課題の一つとして広く認識されております.社会インフラをできるだけ永く活用するためには,維持管理技術の向上とそれを担う技術者(メンテナンスエキスパート)の継続的な育成が必要不可欠です.近年では,従来の知見のみでは予測できなかった様々な劣化損傷事例もみられるようになり,これに対応しながら維持管理技術も日々進化し続けております.
メンテナンスエキスパートは,これまで培われてきた知識・経験だけでなく,このような様々な事例と新しい維持管理技術を日々学びながら,健全な社会インフラを保持していくことが求められます.そのためにも,継続的に維持管理技術を学ぶことができる組織的な仕組みが必要不可欠です.特に山口県のような地方においては,その地域特性や社会環境を熟知したメンテナンスエキスパートを養成していくことが重要となってきます.
このような背景のもと,山口大学では文部科学省「成長分野等における中核的専門人材養成等の戦略的推進」事業の御支援を受けて,2014年度から「インフラ再生技術者育成のための地域ニーズを反映した学び直しカリキュラムの開発」に取り組んで参りました.その活動の一環として「社会基盤メンテナンスエキスパート山口(ME山口)」の養成プログラムを開発し,本センター設立以降は,山口県内の管理者や民間業者との連携をいっそう深めながら,このME山口養成事業を企画・運営しております.
将来的には,ME山口養成講座の大部分を同講座の修了生が務めることができるようになり,地方における社会インフラの維持管理技術の継承を図っていきたいと考えております.さらにこのME山口養成講座を含む本センターの活動から全国に向けて情報を発信することで,我が国の維持管理技術の向上にも貢献していきたいと思います.本センターの教育・研究活動に御理解を頂くとともに,御支援を賜われれば幸いでございます.
安心安全で活力ある社会生活を持続するためには、社会基盤施設(インフラ)はなくてはならない。しかし、我が国のインフラには高度経済成長期に建設されたものが多くあり、急速に老朽化が進んでいる。日本の橋梁の 70%を占める市町村が管理する橋梁では、通行止めや 車両重量等の通行規制が約 2,000 箇所に及び、その箇所数はこの 5 年間で 2 倍と増加し続けている。
このような状況のもと国、地方公共団体、高速道路会社等の管理者を問わず、インフラの適切な維持管理と長寿命化が喫緊の課題となっている。しかし、十分な財源や人材が確保されているとは言い難く、地方公共団体、特に市町村ではこの問題がより深刻である。この問題を解決するために、構造物ごとの点検・診断の高度化・自動化が可能となる技術の開発並びに、地域の特性を理解した上でインフラの維持管理に従事できる技術者の養成が急務である。
上述の社会的背景を踏まえ、社会基盤マネジメント研究教育センターは技術開発および人材育成を通じ、知の拠点たる地方基幹大学として地域に貢献することを目的とする。この目的を達成するために、以下の事項をセンターのミッションとする。